コラム:孫子に学ぶ営業の鉄則-3

 

前回のコラムまで【コラム:孫子に学ぶ営業の鉄則-1(前編)】【コラム:孫子に学ぶ営業の鉄則-2(中編)】と2回に分けて、営業力を強化するポイントをについて、孫子の名言の中でも最も有名であろう一文「彼を知り己を知れば、百戦して殆うからず」になぞらえて解説してきました。

1.自社商材の特徴
2.競合商材の特徴
3.自社商材と競合商材の違いと差

この3つの切り口のうち最初の2つについて解説したのが前回。一連のコラム最終回では「3.自社商材と競合商材の違いと差」について解説していきます。


3.自社商材と競合商材の違いと差

先にあげた「1.自社商材の特徴」「2.競合商材の特徴」は、実はこの「3.自社商材と競合商材の違いと差」への布石でもあります。競合した商談で「勝てるプレゼン」を組み立てる為に大事なのは【自社商材と競合商材の違いと差】の視点で、それを正しく理解できているかということです。

どうでしょう、自社商材と競合商材を比べる時に「違い」と「差」を意識して考えていますか?

営業の商談を想定した上での理解としては、

「違い」-仕様としてどちらかには無い
「差」 -仕様として双方にはあるが、レベルが同一ではない

「違い」は、自社商材だと〇〇が出来るけど、競合商材ではそれが出来ないというイメージですね。お客様の要望を実現できる機能が自社商材にあって、競合商材になければ非常に有利ですし、逆であればその商談は苦戦を強いられるでしょう。

「差」は、サイズなどが典型的なものでしょう。私がかつていた工場のFA界隈ですと、センサーの設置スペースが限られている為に、自社商材は問題ないが、競合商材はサイズ的に無理があるというパターンがよくある話です。精度や反応速度もどのメーカーにもある基本仕様ですが、そのレベルには大小の差が存在しています。Web広告であればページビューやクリック数、金融商品であれば利回りなどがそれに該当しますね。

大事なのは仕様面で競合に対して勝っている負けているということではなく、まずはその事実を正しく理解し、それを元に商談に応じたプレゼンを組み立てるということです。業績が上がらない営業担当はここがとにかく雑もしくはほとんど意識できていません。更に酷い場合、仕様で負けているから無理ですとあっさりと商談を諦めてしまったりもします。この諦めるようなケースは営業担当が勝手に判断しがちで、上司に報告すらされないケースも多々あります。競合に発注が出た後、ふとしたキッカケで上司の耳に初めて入り、「何やってんだ!」と叱責されるような光景は決して珍しくは無いのです。

「違い」で自社が不利なケースは、その点だけを見て自社商材の弱さを嘆くのではなく、商談全体で考えた時にそれが致命的なのか?は冷静に見なくはいけません。若い営業は自社の負けている仕様をやたらと気にして厳しい商談だと嘆きがちですが、上司からすれば「その仕様が無いのはどうしようもないけど、この商談でもっと大事なのは別のポイントでそこはむしろうちが有利じゃないか」と思うケースも全然ありますよね。
もちろん、日々営業をしていれば商談の大事なポイントで競合商材との「違い」によって不利な状況にあるケースもありえます。それを巻き返すプレゼンの組み立て方もあるのですがそれは少し高度なノウハウなのでオープンなコラムでは言及は避けておきます。

今回、皆さんに伝えたい、より幅広く活用できるノウハウは競合商材との「差」についての考え方です。

具体例をあげてみましょう。

一般的には納期が7~10日ほど掛かるのが当たり前とされる商品があったとします。それに対して、自社は2日納期が売り、競合は3日納期が売りという状況だったとしましょう。この事実をどう捉えるか?

一般に比べて自社は非常に納期が早い。でも競合も同レベルだからここでは差がつかない。

まさか、こんな捉え方してませんよね?と言いたいところですが、業績が伸びない営業はこういう捉え方をしがちなのです。これは、明らかな間違った認識です。「似たようなレベル」と「同じ」はしっかりと区別をして考えないといけません。この場合の捉え方は「うちは圧倒的な業界最速納期であり、競合に対しても1日早い納品ができる」が正解です。間違ってもせっかくの「差」を、「似たようなレベル」と同一視してはいけません。納期の1日の差に意味があるかないかは、お客様が、場合によっては商談によって決めるのです。サイズの1mmの違い、ページビューの100の違いも同じです。それを営業が勝手に「同レベルで差が無い」(本当はあるのに)から勝負できるポイントでは無いだなんて考えているようではダメです。
もちろん、その「差」がお客様にとっても大した意味が無い為に勝負ポイントに出来ないケースもたくさんあるでしょう。その手の商談はここで取り上げる対象ではありません。その「差」が意味をなさない商談もあれば、営業が丁寧にプレゼンすることでその「差」がお客様にとって意味ある「差」となる商談は必ず存在していて、その商談は絶対に取りこぼさないようにしましょうという話なのです。その為には、正しい理解の元、少しの差が意味を持つようなシチュエーションを交えたプレゼンを組み立てるのです。今は意味が無くても、その差が将来的に意味を持つ可能性が無いのかも考慮すべきでしょう。その差がコストや工数へ換算できるならしっかりと数字で示すことも忘れてはいけません。これを丁寧に実践できれば間違いなく、年間で受注獲得できる競合商談は増えるはずです。
ちなみに、逆に自社商材が不利な「差」は「その差は、本当に問題ありますかね?」というプレゼンの組み立てで考えてていきましょう。

最後に・・・

【孫子に学ぶ営業の鉄則】と題して3回にわたってお届けしました今回のコラムの内容ですが、「当たり前の内容だし、まぁうちの部下は大丈夫」なんて思わないでください。そこは、もっと慎重に「うちは大丈夫かな?」と少し心配性なくらいでちょうど良いのです。今回の内容が業績向上にとくに効いてくるのは、これまでの営業レベルでも受注獲得出来ている商談ではなく、取りこぼしたり、不要な値引きをしてしまっていた商談、つまり組織として従来の数字に対して上乗せとなってくる余地と言える部分です。組織の責任者としてそこを少しでも伸ばしたいとお考えであれば、是非、実態確認をしてみてください。そして、競合との「差」の話しと同様の視点で「大体出来ている」はOKではないという理解で、改善余地を見出していただければと思います。


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