コラム:注文下さいが言えない営業-1

 
営業力強化コンサルティングの指導として業績向上への課題を抱える企業様へ伺って、最初の現状分析をしている段階で顕在化する典型的な課題、いわゆる「あるある」の1つに、営業が「注文下さい」に相当するフレーズを適切なタイミングで言えていない。もしくは、「注文ください」ということ自体を商談において意思表示できていないケースすら少なくないということです(業態によって「契約してください」「発注してください」も同じ状況だとお考えください)。

今でこそ営業力強化コンサルティングの初期段階でこの課題が出てきても、「ああ、今回もココに課題があるんだな」と思うだけですが、この傾向を感じ始めた頃は正直かなりの驚きがありました。

営業の重要ミッションの1つは【お客様に注文を頂き、会社の売上を上げること】であるにも関わらず、営業がお客様に肝心な「注文下さい」の一言が言えてないなんて。。。

では、そういう営業は替わりに何を言ってるのか?どんな交渉をしているのか?

Thumbnail12それは「前向きに検討してください」のような中途半端なお願いを残して帰ってきてるのです。しかも、お客様が注文する気になっているような状態ですら、この一言で引きあげてきているケースも珍しくありません。その他では、同じくお客様が注文する気になっていてその場で受注できる状況なのに、なぜか「では、まずは御見積書を」とトンチンカンなことを言っているケースもありますね。商談スキル向上の指導一環として現状の商談内容を確認している時に、明らかに違和感のある商談進捗状況なので「ちょっと今すぐお客様に電話して、先日からの件ご注文いただけますか?と確認してみてください」と指示をして実践してもらうと「言われたとおりに連絡したら、本当に注文いただけました!」という結果になることもあります。これ、本人も問題ありですが、上司の方は一体何をしてるんですか?という話です。

どうして、そのような事態が起きてしまうのか?
これまでに、多種多様な業種で状況を観てきてわかった代表的な原因は3つです。

1-注文下さいと言うのは良くないことだと思っている

 人によっては信じられないかもしれませんが、今の20代の営業経験が浅い若手は「注文下さい」と営業からお客様にPushするのは心理的に「良くない」と思っているケースは結構多いのです。その理由を聞いてみると「注文が欲しい」という営業の都合をお客様に押し付けるのは気がひけるとか、嫌だという答えがが多くて、その裏にあるのは「そんなことをしなくても然るべき時がくれば注文してくれるのだから、それを待てばよい話で、営業の都合を相手に強要するのはどうかと思います。」という理屈です。嘘でしょ?と思うかもしれませんが、本当にそんなスタンスがありえるのです。でも、実はこのスタンスの奥に潜む事の真相は「相手に自分の要望を主張することがができない、嫌だ」という自分都合が無自覚に存在するケースがこれまた結構多いなというのが、ヒアリングを重ねてきた実感でもあります。この辺の真相を知っていただくと「なるほど」と一定の納得をしていただける方もおられるでしょう。
あと、これも理解に苦しむ人がいると思いますが、「注文下さい」と言うと怒られそうでなかなか言えませんという理由も結構出てきます。(このケースについては、後程解説します)

 では、この問題はどう改善していくべきかというと、やはり「注文を頂くこと」が正当なビジネス活動であるという理屈を丁寧に説明し納得させることが第1ステップとなります。ただ、そこが納得できても、先ほど解説したその裏に潜む「実は自分の都合で実践出来ていない」という原因が足を引っ張ってしまい、頭では分かっていてもなかなか実践で言葉を口にできないという段階があるので、ロープレや同行営業で場数を踏ませて、営業として当たり前の行動として実践で身につけさせるしかありません。
マネジメントの鉄則【部下のわかっているは、必ずしも実践できるではないと踏まえるべし】です。

2-営業がお客様に対して【過度】に自分を低く観ている

 これは若手もベテランも関係ない傾向ですが、なぜか「お客様>営業」下手すると「お客様>>>営業」のような心理状況な営業が多いのです。こういう営業は、商談の過程において、何をするにしても過度に下から入る傾向があります。

・忙しい中、私なんかの為に時間を取らせてしまって申し訳ない
・忙しい中、商談内容をあれこれヒアリングするのは申し訳ない
・競合より価格、性能で負けている商材を提案して申し訳ない

代表的なのはこういう心理状況です。別に、営業がお客様に対して上からいくべきなどという馬鹿な話をしているのではありません。「過度」に下手から接し過ぎるのは良くないという話なのですが、多かれ少なれ業績が悪い営業にはこの傾向が見てとれます。逆の立場で、腰が引けすぎる営業から何かを買いたくなるか?と問えば、それはそうではないと、ほとんど人が答えるにもかかわらず、いざ自分のこととなるとそれがなかなかうまく立ち回れていないのが実情のようです。

この理由は、大きくは2つが考えられます。

◆営業としての自分に自信がない
いろんな意味で知識が浅く、知らないことを突っ込まれたら嫌だという心理が働いている傾向が強いですね。特に圧倒的に弱いのが、客先やその業界に対する知識です。だから深い話になることに対して全く自信が無いし、そんな自分が相手と対等に商談できるわけがないと、初めから気持ちの面で負けてしまっているのです。

◆自社商材に自信がない
自社商材に突出した対競合優位ポイントが少なくて、いつも比べられて苦戦していたりするとここで腰が引けがちです。商談において、価格でいつも叩かれ慣れてしまっているケースも同じですね。どこかで、自社商材に対する負け癖がついてしまっているともいえます。そして、こういう営業はご多分に漏れず「隣の芝が青々と茂って見えています」し、業績が上がらないのを商材のせいにして逃げがちです。もちろん、厳しい商材で勝負しているケースもあるでしょうし、逃げ腰の営業の主張がすべて間違っているとはいいませんが、隣の芝ばかり見て言い訳していてその先に何か良いことがあるのか?という視点を、組織として持てるようにはしなくてはいけませんね。

 この2つの理由を踏まえて、自分を低く観た営業をしてしまうという課題を解決する最大の方法は「勉強する」です。少なくとも主要顧客との商談では、対等に話せるくらいに客先のことや関連する業界について知識を身に付ける必要があります。また、自社商材についてもっと深く理解する必要もあるでしょう。どんなお客様にどんな価値を提供できるのか?競合に対して優位に立てる要素はどこにあって、それはどういう時に威力を発揮するのか?
業績に苦労している会社で、営業力強化でコンサルに入ると、このあたりの知識はまず間違いなく改善の余地が残っています。「うちは大丈夫です」と事前に伺っていたとしても、私が中に入って状況を詰めていくと感覚的には80%以上の組織で「出来ていない」という診断になっています。厳しい言い方をすれば、その程度で「出来ている」と言ってるうちは現状から業績を伸ばすのは難しいし、逆を返せば「そこを強化するだけでも伸びシロは取れる可能性は高いですよ」という話なのです。

少し長くなってきたので、「営業が注文下さいと言えない」理由の3つ目は、後編:【コラム:注文下さいが言えない営業-2】へ続きます