コラム:注文下さいが言えない営業-2

 
前回のコラムでは、営業力強化コンサルティングの指導で、業績向上への課題を抱える組織の分析をしていくと、お客様に「注文下さい」の一言を言えない営業担当が存在しますということで、その理由と改善策について【コラム:注文下さいが言えない営業-1】としてご紹介しました。今回は、前回取り上げた「営業が注文下さいと言えない」3つの理由の3つ目の話しです。

「営業が注文下さいと言えない」3つの理由1つ目、2つ目は
1-注文下さいと言うのは良くないことだと思っている
2-営業がお客様に対して【過度】に自分を低く観ている
でしたが、最後の1つはこちら

3-契約を確定させるための不安要素を潰せていない

 正しくは「当該商談において、注文を獲得するためにクリアすべき【お客様側の発注決定条件】を正確におさえられていない」となります。これは、出来る営業ほどしっかりと把握しているし、業績が伸び悩む営業ほどここが曖昧この上ないという傾向があります。ただ、成績の良い営業であっても、問いただすと曖昧で、実はなんとなく受注できているだけというケースもあるので、「業績が良い=把握度が高い」が絶対に成立するわけではありませんが、「業績が良くない=把握度が低い」の構図は、かなりの確率で成立します。では、それらが「注文下さい」と言えないことにどう関係するか?

お客様が注文を出す条件の把握が曖昧
 ⇒つまり商談が注文となる段階がはっきりわからない
 ⇒わからないのに「注文下さい」なんて言えない

わかりやすく言えば、このような構図です。thum101
商談スキル強化のコンサルティングで、成績が伸び悩む営業担当に対して、案件ごとにお客様側での発注決定条件を確認すると、驚くほどしどろもどろになります。多くの場合、お客様から直接聞き出した情報は少なく、営業に都合の良い思い込みと推測展望を連発し、その根拠を問うても何一つ答えられないのです。しかも、本当の問題は実は別にもあります。それは、その場で突っ込まれて回答に窮する商談が、既に社内で上司から状況確認済みの商談であるということです。つまり、指導をするべき上長が、どのような情報をおさえるべきかを理解できていない、もしくは自分が商談をすれば実践出来るけれど、部下に指導ができていない状態ということです。
人によっては、間違ったタイミングで焦った「注文下さい」を口にしたことで、相手に怒られて商談がダメになるのが怖いというその先の心配もあるようですが、基本、そんなことで商談はダメになりません。それでダメになる時は、別で決定的にNGとなる要素があるものです。

さて、では、このケースの場合は改善策はどうすべきか?

 まずは、お客様が「注文決定」する条件を把握するためには「何を確認すれば良いか」を知る必要があります。普段からこれらの情報をヒアリングし慣れていないのであれば、簡単なヒアリングシートを創って活用することも有効な一手です。そして、それを必ず商談過程でヒアリング実践できるようにトレーニングをする必要がありますね。マネジメントの鉄則【部下のわかっているは、必ずしも実践できるではないと踏まえるべし】です。

いかがでしょうか。ここまで2回のコラムに渡って「営業が注文下さいと言えない」3つの理由として解説してきましたが、このコラムを読んでいただいている上司である皆さん、もしかしたらどこかで他人事に感じておられるかもしれません。しかし、業績向上に課題を感じられているのであれば、一度何人かの部下に営業同行してご自身の目と耳で実態確認してみることを強くオススメします。案外「え?なんで、今のタイミングでお客様にプッシュしないんだ?!今の注文下さいで商談終わるところだろう。なんで前向きに検討してくださいとか言ってるんだ?!」と驚く商談に遭遇するかもしれませんよ。

Thumbnail22最後に、余談ですが、面接などの設問で
「ここにある普通の100円ボールペンは私に売り込んでください」
というのがあります。この設問に対して、多くの人は持った感触が良いとか、サイズ感が絶妙だとかあれこれと何の変哲もない黒ボールペンを褒め称えてプレゼンしてきます。別段、それが悪いとは言いません。でも、時折いるのです。「このボールペン、100円なのでとりあえず一本買ってくださいよ」といきなり切りだせる人が。コロンブスの卵かもしれませんが、そのシンプルなスタンスこそ、ある意味営業の本質でもあるはずです。プレゼンテクニックなどの情報が増えてしまっていることで、どこかで、営業の重要ミッションは「買ってもらうこと」だという認識が少し弱いのかもしれませんね。面白いなと思われた方は、何も言わず部下に先ほどの質問してみるのも面白いと思いますよ。さて、何人が「買ってください」というフレーズを口にするでしょうか。

前編:【コラム:注文下さいが言えない営業-1】