コラム:「伝える」と「言う」は違う-1

 
今回は「伝える」と「言う」は違うということについて。

私の中ではこれは重要な考え方であり、これまでのマネジメントにおいても、何度も何度も周囲やメンバーたちに説いてきました。【言葉】というものは、人と人が【双方向でコミュニケート】する大事なツールで、【言葉】を操り、「伝える」「言う」という行為を行うことによりコミュニケートする訳ですが、相手に向かって、言葉を発するだけの一方的な行為を「伝える」「言う」にカテゴライズする人も少なくはありません。

例えば、以下のようなやりとり。

上司  「先方に、●●の件についてはちゃんと伝えてあったのか?!」
部下  「間違いありません。先日の商談で確かにその件は伝えてあります」
上司  「では、どうして先方から、この件は同意できないと今頃言われるんだ?」
部下  「でも、私は確かに伝えたんです。。。。」

どうでしょう。きっと似たような経験があるのはないでしょうか。

この場合の問題は、今回の「伝える」「言う」の定義にある訳です。上司にとっては、先方に説明し、理解はたまた同意をもらうことを「伝える」としていますが、メンバーは、要件を先方の前で口にし、発言したことを「伝える」としていて、そこには、先方の理解や同意は含まれていません。その結果、例のような事態になってしまうのです。

先方からすると、
「聞きはしたけど、同意はしてないよ」
「そういえば、言ってた気がするけど他の内容に気がいって、ちゃんと聞いてなかった」
こんな感じでしょうし

メンバーからすると
「自分はちゃんと伝えたし、その上で特に質問も異議もなかったからOKと思っていたのに」
というところではないでしょうか。

経験が少ない営業に特にありがちな事例ですね。でも、部下の認識している定義も一般的には「伝えた」のうちには入りますから、一概にメンバーの責めることもできません。むしろ、問題は、そこの定義を握れていなかったことにあるので、指導側の責任とも言えます。 この「伝える」「言う」という言葉の定義に気をつけて、下としっかりと握れていれば、例のような、誰にとっても不幸な事態を極力回避できます。ちょっとしたことですが、こういう1つ1つの精度、質を上げていくことが、メンバー指導には大事な積み重ねとなるので「伝える」「言う」というのは単に言葉を相手に投げる事ではなく、その先の同意、反応獲得までを含むのだといった、より具体的な定義を、日頃からメンバーと握るよう意識してみる事をお薦めします。

その2はコチラ:「伝える」と「言う」は違う-2