コラム:「伝える」と「言う」は違う-2

 
以前のコラム「伝える」と「言う」は違う-1(←LINK)では、営業とクライアントの間に、起こりがちな問題について書きましたが、似たような問題は上司と部下の間にも日常的に起こり得ます。

オフィス内で日常的にに見かける光景だと

 「どうして、やれと言った事が出来てないんだ!」
 「説明した時にわかったと言ったのに何故やってないんだ!」

というやりとりであったり、部下が指示した事をやっておらず、上司にそれを報告する時

 「私は、ちゃんとやるように言ったのですが・・・・・」

というセリフが口をついてしまう。

どうですか?心当たりの1つや2つありませんか?

何故こんなことが起きるかというと、前のコラムのケースと同様で、指示の最終目的は「伝える」ではなく「行動させる」なのに、指示する側が「伝えた」「言った」で行動を完結してしまっている為で、これは誰にとっても良い事はありません。現場でこのような問題を起こさないために、行動するための指示を「伝える」「言う」ときに確認すべきポイントは細かく分けると3つあります

 1-指示の意味は理解できるか
 2-指示について納得したか。違和感はないか。
 3-指示したことを実行できるイメージは持てているか。

そして、この3つのポイントから考ると、指示をした際の回答、反応が「わかりました」であったとしても、この「わかりました」の意味することは微妙な違いが出ます。

 a-言ってる意味はわかるけど、納得はできない
 b-言ってる意味はわかるけど、現実的ではないと感じる
 c-意味も分かるし、納得もしたけど、やれるイメージがわかない

こんな感じですね。結果「わかりました」という言葉があったにもかかわらず、指示した側の意図した行動や結果がみられないという事になってしまう。しかし、受け手の言い分からすると「わかりました」と言った事にある意味嘘はないのです。指示する側からすれば「わかりましたと言えば、普通は・・・」と言いたい気持ちは非常によくわかりますが、実際にはこのようなケースは決して特殊ではなく、残念ながら、どこの職場でもありがちなことだと言えます。

では、このような残念なコミュニケーションミスを起こさないためにどうすればいいのか。

指示を伝える時に先に書いた3つのポイント

 1-指示の意味は理解できるか
 2-指示について納得したか。違和感はないか。
 3-指示したことを実行できるイメージは持てているか。

これを毎回きっちりと確認すればいいのです。そこで反応があれば、それをしっかりと話し合えば良いでしょう。そして、やりとりの結果で特に問題がなければ、最後に必ず念を押します。

 「今、特に質問、意見がでない以上
  ●●までに、全員▲▲が実行するという事でいいね?」

これもまた重要です。たった一言ですがここを明言することで明確な約束事が成立するので、これでやるべき事ができていなければキッチリ叱り、指導をすればいいのです。

また、3つのポイント確認の中でも特に<3>については、すべき事の難易度が心配な部下に対しては具体的にどう行動するのかを話をさせるといいでしょう。ここで回答がしどろもどろになるというのもありがちなケースです。指示を受けたその場では本人はわかったつもりでも、いざ具体的に行動しようとしたときに「あれっ?」と思うことは若い人ほど良くあります。指示を伝えた時の本人の「わかりました」に意図的な嘘はなく、思い込みや勘違いだったのであれば、それに気づいて導くのも上司の大事な枠割です。

これらのことを常に実行するということは、手間だと感じる方もいるのかもしれません。しかし、最初のところでポイントとなる部分を曖昧にしたために、後々不都合なことが起き、その解消に時間を費やすのであれば
最初に少し丁寧に取り組む手間は、決して無駄にはならないはずです。