コラム:どこで働くか、誰と働くか-1

前回までの《コラム:若手の職場定着-1》《コラム:若手の職場定着-2》で、

より良い人材が定着する組織を創るためには
採用部門と受入れ側の部門での連携強化が重要

ということで私の考えを書かせて頂いたのですが、後編の《コラム:若手の職場定着-2》の最後に
実はもう1つ、受入れ側部門として大事にすべきだと考えている要素として

「どこで働くか、誰と働くか」

という価値観の実現があり、続きは次のコラムにてと結んでいました。今回はそこについて書いてみます。

この「どこで働くか、誰と働くか」が大事であるという考えは、私だけの特別な意見ではありませんし、皆さん自身も働く環境という視点でこれは重要だと思っている方はいるでしょう。一方で「より良い人材が定着する組織を創る」という視点から、自組織は「どこで働くか、誰と働くか」が満たされる環境にあるか?という客観的に振り返ってもらうと、人材確保(定着)・育成に苦戦している組織ほど、それは弱いというのが実感です。

何故、組織(特に管理職者)にとってその視点が大事なのか?採用部門がどんなに試行錯誤して良い採用を行ってくれても、人材が定着してくれるか否かは、実際に配属された先の働く環境による影響が圧倒的に高いことは言うまでもありません。つまりはより良い人材が定着するための鍵は、日常的に多くの時間を過ごすことになる「受入れ部門での職場環境」に掛かっているのであり、「どこで働くか、誰と働くか」なのです。

例えば、会社の業績や方針によっては、福利厚生含めた待遇が働く人にとって充分ではないケースも多々ありますが、「どこで働くか、誰と働くか」が満たされているならば

・ここはお金ではない価値を手にできる
・●●さんと一緒に働きたい

といった想いが人材をそこで働き続ける大事な理由になります。実際、決して待遇面に満足しているわけではない状態で今の会社で頑張っているという人の中には、「なんだかんだで、今の仕事は面白いと思っている」「今の上司の下で働きたい、役に立ちたい」という想いの人も少なくないはずです。より良い人材が定着する組織を創るために組織として「どこで働くか、誰と働くか」をいかに満たしていくか?について、もう少し詳しく書いてみます。

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まず「どこで働くか」

今回は、人事や労務の管轄となる待遇面ではなく、現場マネジメントとしてできることという視点から働く環境について書くのですが、「ここ(そこ)で働きたい」と自然と思える職場環境にはどんな要素があるでしょう。

  • この組織で働く先に成長イメージが持てる
  • 責任ある仕事を任せてもらえる
  • 自分が将来やりたいことに繋がる
  • 目標、手本となる上司先輩がいる

パッと思いつくであろうものはこういったものではないでしょうか(「仕事が楽だから」のようなネガティブな視点は脇に置いてあります)。共通するのは「やりがい」「手応え」と表現するとしっくりきますかね。労働意欲を、待遇よりもその環境で得られる「やりがい」「手応え」に強く感じられる人は組織へのエンゲージは高い傾向があると思います。

ただ、人材確保(定着)・育成に苦戦している組織が、もっと重視すべき基本的な要素があります。それは

  • 自分は必要とされている
  • 上司や組織から大切にしてもらえている
  • 自分が組織貢献できることがイメージできる

ということを「社員が実感できる職場環境である」ということです。少し固い表現だと「自分に対する周囲からの承認を実感できる」つまり自分の居場所をそこに見出すことが出来るとも言えるでしょう。仮にこの職場環境を実現できている組織をグループAとします。

これまで様々な組織の中を観てきましたが、人材確保・育成に課題を抱える組織には、先に上げた要素の真逆の感情が渦巻いていて、

  • 必要な人材と思われているかわからない
  • 会社、上司に大切にされていると感じたことが無い
  • 自分は組織にいてもいなくてもいいんじゃないか
  • 自分に対して、上司からの関心を感じない
  • 自分が何を求められているかよくわからない

こんな想いを耳にすることは珍しい事ではありません。特に、中小企業の管理職層とこういう話をすると「自分は会社や上司に大切にされていると感じられない」という嘆きを聞くことが多いですね。会社や上司の方が大切にしていない訳ではないと思いますが、そこには温度差があって、何よりもコミュニケーションが足りていないのは間違いありません。仮にこれをグループBとします。

グループAのような感情が溢れいてる組織
グループBのような感情が溢れている組織

より良い人材が定着する組織、ここで働き続けたいと思ってくれる社員が多いのはどちらか?もちろん聞くまでもない事です。でも、自分たちの組織は概ねどちらのグループ寄りかと客観的に観た時に胸を張ってグループA寄りだと言えるでしょうか?どちらでもないという回答もあると思いますが、人材確保・育成に課題を抱える組織では「もちろんグループAよりの組織を目指したいけれど、実際はグループBよりの組織になってしまっている」という回答が多いのです。「どこで働くか」に応えられる職場環境の実現の余地はまさにここです。

では、どうすればグループA寄りになっていけるか?のシンプルな回答は、とにかくまずは必要なコミュニケーションを取る事に尽きます。実際は自分の組織で部下たちがどう感じているか?何を考えているか?を知るべきですし、会社や上司が部下を大切に想い、必要な人材と考えているにもかかわらず、その想いが当人たちに届いていなかったり、認識のずれがあるとわかればそれを正すべきなのです。そこは言わなくてもわかるという以心伝心のような不確かなものに依らず、会話でもって担保することが不可欠です。

「どこで働くか、誰と働くか」後編へ続く

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