コラム:若手の職場定着-2

 
前編 コラム:若手の職場定着-1からの続き

では、より良い人材が定着する組織を創るためにはどうすべきと私が考えているか。

まず
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「辞めない人材」⇒「長く働いてくれる人材」
「辞めさせない職場環境」⇒「長く働きたくなる職場環境」
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という視点からスタートするだけでも違うはずですし、正しくはこの視点であるべきです。

その上でより良い人材が定着する組織を創るためには、採用部門と受入れ側の部門でもっと連携を強めなくてはいけないでしょう。
簡単なところでは【会社が欲しい人材(これは多くの場合、人事が採用しようとする人材とほぼイコール)】と【受入れ部門が欲しい人材像】は擦り合わせてあるのか?これ、実は双方が納得できる摺合せの上で採用活動している組織はどれほどあるのかなと思います。さすがに全くできてないということは少ないでしょうが、「必要十分」に出来ているのか?と自問してどうででしょうか。例えば、採用面接の中盤で営業やエンジニアリング部門の責任者が面接に参加することでそれを担保している認識があるかもしれませんが、それは厳しい採用環境の中、より自社へのマッチング度の高い人材を選考する為に、「必要十分」な認識摺合せに相応しいのでしょうか。ましてや、一括採用し、入社後に配属部門を見極めて振分けなんて、これは受入れ部門としては選択の余地もない無茶な話です。

受入れ側の感じるあるあるな話で行くと、

  • 現場の厳しい実態を伝えると敬遠されるので、採用段階はそこには触れられていない
  • 理念やビジョンといった要素に「過度に」思考がフォーカスさている
  • 若くても責任ある仕事をどんどん任してもらえます!やりたいことは手を上げれば出来る会社です!なんて話しを聞かされて気持ちが高揚している

こんな状態で配属されてきた新人たち。そういうポジティブな気持ち一杯の人材に現場のネガティブな一面を見せていく難しいミッションごと「はい、よろしく」と引き渡されて、

「こんな仕事がしたくて入社したんじゃない」
「こんなに大変なんて聞いてません」
「それ私がしなくてはダメなんですか」

と耳を疑うようなことを言われたり、あげくそれでも当然のすべき事に取り組ませて若い人材が疲弊すると現場のせいにされてしまう・・・。

いかがですか。
「そうそうそう!」と思われた方、結構いるんじゃないでしょうか。
これもまさに部門間連携不足の表れと言えます。

でも、反面、採用部門の人達が、各現場のリアルな厳しさをどれほど見知っているのか?というとこれもまた結構わかってないことが多いはずです。営業職は厳しいという抽象的な話ではなく、自社の営業は何がどのように厳しいのか?であったり、エンジニア職は長時間労働になりがちということではなく、その長い時間のもっと内幕で大変なことは何かという職種別の一般論では無い自社のリアル。でも、これは採用部門の人達に受入れ部門の現場側からちゃんと伝えなければ、いつまでたってもその認識の差は埋まりません。

つまり、先に書いた話も含めて、これら全ては「採用部門と受入れ部門の関係者で、認識を共有しながら採用活動を進めていく」を丁寧に進めていけるか否かということが重要なポイントになるわけです。

もう1つ、人材採用のプロジェクトにおいてしっかりと準備すべき要素でありながら、不十分なケースが多い要素が「受け入れ部門側の環境整備」です。今は、企業にとっても採用は非常に難易度の高いプロジェクトになっているので、採用部門の方たちが物凄く大変なのは重々わかっているつもりです。でも、どうしても選考して採用、基礎研修を施して現場へ引き渡すまでの採用部門の管轄範囲内のことで手一杯になってしまい、せっかく自分たちが苦労して採用した人材をしっかりと引き継いでもらえる準備をしてもらえているかまで、目を配りきることができていないというのが、人材の定着率が悪い企業の抱える1つの課題でもあるのです。そして、採用部門が現場で活きる人材を採用しないと不満をこぼす受入れ部門も、「では自分たちは受入れ準備をしっかりとできているのか」「職種別スキルの指導計画は万全なのか」「現場でのフォローアップ体制は整っているのか」というと、人材の定着率が悪い組織ほどなんとなくで進めていることが多い。それで、より良い人材が定着しないと嘆いても、それはそうでしょうと言わざるを得ません。もはや「仕事のやり方」ばかりを教えて日々をこなす中で、勝手にどんどん人が育つようなケースはレアであり、人が育っている組織ほど、しっかりとした準備や計画立てた人材育成施策を実践しているものです。

参考までに、私が営業部門の責任者だった頃は、新卒社員の育成計画は入社から最初の3ヶ月は【1時間単位】で退社予定時刻(当面は早い時間帯で退社させる)までみっちりと予定が組んでありました。また、そのそれぞれの予定には担当責任者も全て割り当ててある状態にしてあったので、進捗はその責任担当者に確認するという運用でした。中途社員の場合は最低限で1ヶ月の予定が同じく1時間単位。以降は、状況を見て柔軟にという方法をとってあり、新しく加入してから立ち上げまでの期間はいつも短かったのはこの成果だったと思います。いつまでにこのレベルに到達させるという明確な目標から逆算された具体的な育成計画なので、当然と言えば当然の結果だったのですが。

話しは改めて本題に戻りまして、より良い人材が定着する組織を創るためには、ここまでに書きましたように人材採用を「現場配属まで」ではなく、「現場に定着するまで(期間は組織ごとで決めると良いでしょう)」で考え、そこに関係する部門で情報と認識を事前事後共有し、その過程ごとに責任分担を明確化して進めることをもっと大事にするべきだと私は考えています。その上で、各責任担当が目的達成に「必要十分」な準備していく。

ちなみに、人材採用~現場定着の過程において、現場定着に関わる責任所在は主に受入れ部門側に分担するのが妥当な線だと思いますが、企業の中で長く受入れ側部門の責任者をしていた経験上から言えば、採用部門との認識共有ができているならば、そこを通過してきた人材はどんな人材であろうと育て上げるという「覚悟」と「具体的な育成策」を受入れ側部門が持つべきだと考えています。「採用した人材が優秀ではないからイマイチだから現場では育てられない」という視点に寄った論理は、市場が悪いから営業業績が上がらないとか、案件が難しいから納期がかかっても仕方ないという言い訳とある意味変わりません。でも、管理職の方々は部下がそういうことを言うと「仕方ないね」とは言わないですよね?「それを何とかするのが君の仕事でしょ。条件が良いところで結果を出すなんて誰にだってできるよ」くらいは言うはずです。

今は、優秀な人材には、起業を始めいろいろな選択肢を取れる時代になり、優秀な人材の採用は極めて難しくなっています。それでも薄い可能性に賭けて競争率の高い優秀な人材採用競争で勝負をするよりは、平均的な人材を受け入れてポテンシャルを引き出し、人材としての付加価値を高められるノウハウを持てるようにしておけば、選択肢はかなり広がりますし、ここを重視して組織風土を創ることが、これから生き残れる企業の1つ条件として今まで以上に重要度を増していくはずです。またそうなれば、より良い人材が向こうからノックして来てくれることもイメージできます。

実はもう1つ、受入れ側部門として大事にすべきだと考えている要素に

「どこで働くか、誰と働くか」

という価値観の実現があります。これは広義において、より良い人材が長く定着する組織を創るために不可欠な要素ですが、もちろん新人・若手の職場定着にも深く関わってきます。
あと、若い人達が安易に「合わなければ転職すれば良い」と考えすぎるリスクについても伝えたいことがあるので、続きは次のコラムにて。

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