コラム:人材育成の公式

仕事をする上でのあり方や指針などが簡潔にまとめられている表現・言葉というのは、迷った時や悩んだ時に立ち止まって考えるにはとても参考になりますし、ありがたいものです。ビジネス書を手に取ると稲盛さんの有名な<人生·仕事の結果=考え方×熱意×能力>のように、仕事をする上でのあり方などを公式化したものというのがありますが、私が人材育成において常に意識していたことの1つを公式化したものが

部下との信頼関係=コミュニケーションの量 × コミュニケーションの質 × 上司のコミット力

「量」は読んで字のごとく、どれだけのコミュニケーションを部下と取れているかという要素ですが、部下の人数や自分の仕事の量が増えてくると、結果的にこの部下とのコミュニケーション量というものは減っていってしまいます。しかし、だからと言って部下の育成を疎かにしてよいという訳ではなく、部下が1人であっても10人であっても、仕事の量が以前の3倍になったとしても、1人1人の部下を育てるという必要性、重要性は何一つ変わりません。人が育たない組織は、上司自身のあり方や組織の風土として、これらの要因が発生した時に、人材育成への取り組みが疎かになっても事実上止む無しとされてしまうことにもあります。本当はおかしいんですけどね。上司となれば部下も増えるし、仕事の量も難易度も変化するのが当たり前ですから・・・・。

「質」は、単に部下とコミュニケーションをとるだけでは物足りませんという視点と、「量」が確保し辛くなる以上、質で担保していくしかないという事です。以前のコラムでも人材育成に繋げるコミュニケーションの一例を紹介しています(コラム:部下とのコミュニケーション)が、上司側の意識の根底に「部下のことをより理解したい」「部下の可能性を今以上に見出し、引き出したい」というものがあるコミュニケーションがどれほど取れているかが重要です。もちろん、そのようなやりとりの前提として、日頃から気軽なコミュニケーションを取れているに越したことはないので他愛もない雑談も必要ですが、上司はそれだけでは物足りないと考えておくべきでしょう。

最後の「上司のコミット力」。自分の部下の成長は、自分が責任を負うのだという当事者意識であり、それに伴う上司自身が多様化する部下に対応できるよう成長し続ける姿勢と、部下の成長、可能性をあきらめない忍耐力です。頑張っている部下がいる以上、絶対に上司の側から、その部下の成長・可能性をあきらめてはいけません。自分の事を考え、想い、真摯に接してくれているという事実を実感することは信頼関係を構築するうえで不可欠です。忙しくて量が確保し辛く、自分は不器用で質の高いコミュニケーションはとれないとしても、この上司のコミット力があれば、それでもなんとか進めていくことができます。

部下との信頼関係=コミュニケーションの量 × コミュニケーションの質 × 上司のコミット力

という公式はある意味、1+1=2のように当たり前に感じるかもしれませんが、その実践となると、仕事でもよく言われる「当たり前のことほど、継続実践することが難しい」の典型だとも思います。全てを同時に実践は難しいかもしれませんが、まずはどれか1つの要素から手を付け改善していくことが、部下の育成を進める一歩だと考え、是非、実践してみてください。

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