コラム:上司からの評価を嘆く前にすべきこと

 
ミドルマネジメントや中堅に差し掛かって自分でも仕事はある程度できていると自信をつけている世代の人と話をしている時に、ありがちな不満・嘆きの1つに「上司が評価してくれない」というものがあります。この言葉の前には「自分は頑張っているのに」「思ったほど」「誰それに比べて」という言葉が付けられていたりするのですが、つまるところは自己評価と上司評価に差があるという話です。

こういった不満をこぼす人に「例えば、もっと評価して欲しい部分てどういうことですか?」と質問するとそれには割と具体的な内容などをはっきりと答えてくれます。ところが「それは上司が求めているレベルに達してますかね?」「それは上司があなたに優先的にやって欲しいと期待していることですか?」と質問を続けると、とたんに回答の歯切れは怪しくなってきます。

「上司が評価してくれない」という不満の要因は実はここにあることが多いのです。
上司の自分への評価に不満があるという人の話を掘り下げていくと仕事への姿勢に少し課題が見えてきます。それは自分ができることを一生懸命頑張っている。しかもそれは<自分のできる範囲もしくはそれを少し超えたレベル>でという状態にあります。頑張っているという事実は間違いないのでそこはもっと評価されてしかるべきだという想いが冒頭のような不満につながるのですが、ミドルマネジメントや中堅クラスのビジネスパーソンはそれでは物足りないのです。会社や上司からの評価の基準は【頑張っているかどうか】ではなく【求められる仕事を適切なレベルで実践しているか】にあります。
それでも若手であれば【頑張っているかどうか】が主たる評価基準とするケースも多々ありますが、もし自分が経営者や管理職の立場だと考えてみて、頑張ってはいるけれど本当にやって欲しい仕事を適切なレベルでやりきれていない中堅以上の部下を評価できるでしょうか。そこはよくやっているという評価はできても、昇格・昇給という目に見える評価を与えるのはなかなか難しいことはわかると思います。

では、どうすれば良いのか?

それは会社や上司に聞けばいいのです。いえ、聞くしかありません。確かに私の目から客観的に見ても、もう少し評価されて然るべきだなと感じる人もいますが、それは所詮外部から見た評価であり、それは会社や上司の評価基準と必ずしも同じではありません。組織の一員である中で、自分が求める評価と実態に差があるのであれば、その差を埋める答えは会社や上司の中にしかありません。だから直接聞くことが一番なのです。また、この時、求められるレベル感は日常の業務のケースをあげて「例えばこういう場合はこれぐらいで出来れば良いのか?」という摺り合せをする方が良いですね。ポイントはいかに正確に共有・共感できるかです。

ちなみに、ここまでの内容をご覧頂いて「そうそう仕事ってのは頑張れば良いかというとそれだけでは物足りないんだよね」と特定の部下に感じている日頃の物足りなさを思い浮かべておられる経営者、管理職の方がいるかもしれません。
でも勘違いして欲しくないのは、今回の題材にしているようなミスマッチの原因は上司側にも大いにあると考える方が良いのです。それは「部下に対しても求めることを当人たちに正しく共有できていない」という上司としての課題です。もしかしたら自分は日頃から口酸っぱく言っているが部下がなかなかわかろうとしないという不満を持たれる方もいるかもしれませんが、そこで「理解できない部下が悪いのだ」と言っていてもそこに状況の改善はあまり期待できません。最終的には適切に部下に理解してもらうまで伝えるのが上司としての責任なのですから、部下の理解力不足に責任転嫁のような状態になるのは好ましいとは言えません。

でもね、そもそもでこういうケースで上司の言い分と部下の言い分を間に入って伺うと、お互いが相手に対して皆まで言わずともわかってほしいという想いがその背景にある。つまり少しづつ相手に甘えてしまってコミュニケーションが足りていないだけということが多くて、一度膝付け合せて話をすればあっさり解決というのもよくある話なのです。どちらの立場であっても今回のコラムを読んでみて思い当たることがある方は一度当人どうして話をしてみてください。きっと「やっぱりこういう話をお互いにちゃんとすることは大事なだよな」という二人の気付きに落ち着くと思いますよ。