コラム:合わなければ転職のリスク

 
解禁された就職活動に関するニュースに想う事として、【若手の職場定着】<Click!>【どこで働くか、誰と働くか】<Click!>と連続でコラムとして書いてきました一連のコラムは、今回で一旦の最後の話題です。

「合わなければ転職すればいい」

この考え方に付随するリスクについて書いていきます。

就職活動をしている段階で、「まずは採用が出た企業へと入社して、そこで合わなければ転職すれば良いだけ」と考えている人たちは一定数存在すると思います。

大前提として、私はこの「合わなければ転職すればいい」という考え方は否定しませし、1つの選択肢としては全然OKと考えています。会社については、結局のところ入社してみないとわからないことはたくさんあって、入社してみてから思惑と違っていたなんてことは珍しい事ではありません。それは、採用する側が「結局、人材として本当に自社にとって良い人材かは働き始めてみないとわからない」と思っている事と同じです。また、いわゆるブラック企業と呼ばれる厳しすぎる職場かも入社してみないとわかりませんからね。そういうことも全てひっくるめて、働き始めるという事はもう大人なわけですから、「自己責任」で進む道を決めれば良いと思います。

ただ「合わなければ転職すればいい」という選択肢の背景に「まぁ、なんとかなるだろう」という楽観的な気持ちを持ち過ぎている人がいて、「それはそんな甘いものでは無いですよ」というのがこのコラムでお伝えしたい話なのです。そこには、当然ながらリスクがあって、そのリスクを引き受ける前提、覚悟をもって転職というカードを切らないと後が大変な目にあいかねません。その具体的なポイントについて、企業の管理職として数多くの中途転職者面接に立ち会ってきた経験も踏まえて書いていきましょう。

面接する立場の人間が、応募書類で間違いなく観るポイントが「職歴」であり、これまで「どこで」「どのくらいの期間」働いてきたのか?直前の退職理由は何か?には当然注目します。言うまでもなく、就業期間の短さや、転職回数の多さは「要注意」要素としてマークされます。参考までに、私は新卒であれば初めの会社に勤めた期間が「3年未満」は短いと判断していましたし、1年未満であれば、基本的に書類選考で落としていました(残念ながら応募数が一定量以上あるとこうやって、何かに基準で一次スクリーニング掛けるしかないのが実情です)。

書類選考を通過すると面接となるわけですが、そこでは必ず職歴について、なぜその就業期間だったのか?と退職理由を確認します。もちろん、応募者はそこには正当な理由、妥当な事情があったという話をされるのですが、いわゆる「自分には合わなかったので転職することにしました」という話になると面接官はほとんどがこう思います。

なるほど、つまりうちに入社してもらっても「合わない」と思った時は、また辞めてしまう可能性は高い人ということね

このコラムの前半にも書いたように、個人個人にその会社、組織が合うか合わないかはそれぞれの主観であり、入社してみないとその結論は分からない訳ですから、結果、せっかく採用してもまた辞めるかもしれないリスクを冒しても欲しいほどの人材なのかという厳しい目にされされます。人の採用というのは凄くお金がかかる事なので、あっさりと新しい人に辞められた時のリスクは、企業にとっても非常に手痛いものなので慎重にならざるを得ないのです。

中には「うちでも合わなかったら辞めますか?」とストレートに質問する面接官もいて、応募者は「今回は頑張りたいと思っています」「御社は合いそうだと感じています」と言うでしょう。当然です。しかし、そのやり取りで面接官はまたこうも思います

いやいや、その保証がどこに?
何を根拠に合いそうだと?

つまり、こう考える面接官を説得できるだけのの理由、根拠が説明できなければ、短期就業後の転職面接はとても厳しい訳です。また、若い人であれば、事前に友人たちと「この理由なら大丈夫だよね?」「これなら、仕方ないと共感してもらえるよね」と相談もするでしょう。「大丈夫、わかってもらえるよ」そんな言葉に勇気づけられて面接に挑む人も多いと思います。

しかし、ここもよくよく注意しなくてはいけない落とし穴があります。

皆さんを面接する面接官はほとんどぼ場合が、応募者自身よりも社会人経験が豊富な年上の人達です。若い社員だらけの若いベンチャー企業でもなければ、最終面接近くなるとかなり年上の人が面接官となる可能性は高くなりますが、自分と同世代や同じ価値観で付き合っている友人の「大丈夫」というお墨付きは、そういった面接官と相通じる価値観の上にあるものなのでしょうか?

残念ながら、そこは楽観的に考えるわけにはいかないのです。若い応募者が自分の価値観では妥当な退職理由だったと思っていても、経験豊富なビジネスパーソンからみれば「甘いなぁ・・・」と思わざるを得ないことは珍しい事ではありません。ですから、事前に相談する人が身近な人でも、なるべく働いた経験が豊富な年上の人(働いている自分の親とかもありですね)にも話を聞くようにして、その人が客観的に聞いても、理解・共感してもらえる「転職、退職」の理由・事情があって、それが「正しく伝えられる状態」にないとなかなか厳しい面接評価になりますね。

中には、転職理由がイマイチでも欲しくなるほどの魅力的な人材というケースもありますが、それは多くの場合、ある程度の歳を重ねた人の場合が多い。社会人3年未満で前の会社を辞めてきた人の経歴や実績をみて「もの凄く優秀な人材だ!」という評価が出来るのはかなりレアケースで、ほとんどの場合が、経験が浅くて判断できないという評価になります。

ここまで読んで頂くと「では、20代前半の転職なんて、凄く厳しいじゃないですか」と思う人もいるでしょう。そうです、ある意味そういうことなのです。若いうちに「合わないから転職」という判断をする場合、履歴書には出てこないこういう事情を背負う事になるのです。そのリスクも込みで「合わなければ転職」という判断をしないと、後が大変ですよというのが本コラムで伝えたい事なのです。

誤解して欲しくないのですが、冒頭にも書きましたように「合わなければ転職」は1つの選択肢としてはありだと思っています。ただ、そう思う反面、採用する側にいた人間だから伝えられえる事実として、このコラムに書いたような実態があるので、よくよく考えて慎重に判断した方が良いですよ、あまり安易に考えるのは危険ですよという話です。

いつも求人を出している会社は、もしかしたら退職者が多い会社かもしれません。「業務拡大につき人材不足で大至急、人が欲しい!」という会社は、入社後、ちゃんと教えてくれる余裕が無い会社かもしれません。キャッチーな情報の裏もちゃんと分析が必要です。また、人間、安きに流れるのは難しくありません。気持ちのどこかで「今の環境から逃げたい」という想いを持った転職は、「負け癖」「逃げ癖」がついて、転職を繰り返すようになる人も少なくありません。

そういうことも全て踏まえながら、大人として自分の責任においた判断によって、一人でも多くの人が自分にとってよりよい働く場に出逢えると良いですね。

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