コラム:会社から大事にされているか?-2

 
先の【コラム:会社から大事にされているか?-1】の後編です。

多くの経営者は社員を大事だと思っているのに、社員がそれを実感できていないというある意味不幸な行き違いが発生する3つの理由

  1. 社員にわかりやすい意思表示で伝えられていない
  2. 体感できる具体的な「何か」がない
  3. 与えている事と求めている事の間にズレがある

について具体的な意味合いと当てはまる場合にどうすべきかを解説していきます。

1.社員にわかりやすい意思表示で伝えられていない

これは、そのままなのですが「言わなくてもわかるだろう」「今さら、そんなこと改めて言えない」みたいなことはダメですよという話です。夫婦や家族同士がお互いへの感謝を口にしないことが良くないように「言わなければわからないこと、大事なことだからこそ口に出して伝えなくてはいけない」というのは、社員を大事に思っていることにも同じくあてはまることなのです。

言葉に出すことはないけれど、社員を大事に思うからこそということで何かをしてあげることも時にあると思います。
例えば、見込み以上の利益が出たので、日頃の頑張りへの感謝を込めて社員に還元しようと食事会を実施したとしたとしましょう。社員からすれば、ご馳走にありつけるのはありがたいけど、それをイコール社員を大事にしてくれている想いの表れだと受け止めるかと言えば、単に儲かったから美味しいものを食べさせてくれた程度にしか思ってなかったりするのです。そこで、少し社員に対する労いと感謝の言葉が経営者から伝えられるだけで、全然違ったりするのですが、経営者はこういうケースの場合「さすがに言わなくてもわかるだろう」「そこは敢えて言わなくてもわかってくれよ」と思いがちです。でも、先に書きましたように、結局はわかりやすい言葉にしないと伝わらないこと、伝わらない層は間違いなく存在しています。気を付けたいのは、言わなくても分かってくれる層ではなく、言わないとわかってもらえない層なのです。一言二言をはっきりと口に出して伝えるだけで、喜んでくれたり、やる気を掻き立ててくれたりしてくれるのなら、やらない理由はありませんよね。

何よりも大事なのは、良い待遇を授けるよりも前に、まずは社内で承認のコミュニケーションを重視した関わりを持つことです。特に「君が社員としていてくれて嬉しい」のような存在承認、マズローの欲求5段階説で言うところの第4階層「承認欲求・尊厳欲求」につながる要素ですね。社員として一緒に頑張ってくれていることに対する感謝やポジティブな想いをわかりやすく社員に伝える。全てのベースはこれありきではないでしょうか。

2.体感できる具体的な「何か」がない

これは先に書いた「1.社員にわかりやすい意思表示で伝えられていない」の次にある問題点なのですが、「経営層や上司が「大事だ、大切だ」と口ではよく言うけれど、それは具体的にどう自分たちに還元されているのか?」という、ある意味では当然であり、ある意味では少し我がままかもしれないこともある言い分。口で言ってくれないとわからないの次は、口に出して伝えれば伝えたで、口だけではなく態度で示せ的な話ですね。はい、上司の皆さんの言いたいことは同じく上司業を重ねてきた私にもわかります。みなまで言わなくても大丈夫です。でも、皆さんも立場が変われば似たような思いがよぎったりすることはありますよね。

この場合、社員たちが求めることは、ほぼイコール待遇面の話です。特に給与面ですね。とはいえ、無い袖はもちろん振れませんし、儲かったら儲かった分だけ給料に還元すればよいわけではないのが経営というものです。でも、社員からするとどうしても「日頃、大事にしていると言ってる社員がこれだけ頑張ったのに、それに見合う給与や賞与にならないの何故なのか」という言い分にはなるわけです。この問題は、社員が欲しいだけの給与待遇を提供していたら会社は潰れてしまいかねませんし、かと言って0か100かの議論でもないので、ちゃんと対話コミュニケーションをとり「一定の納得感を社員の中につくれるか否か」がポイントです。ここの話はまた別途で退職問題と合わせて近日中に書きます。

3.与えている事と求めている事の間にズレがある

これは、社員の視点から思う自分たちを大事に思ってくれているなら「~~してくれると嬉しい、ありがいたい」「~~欲しい」ということと、会社が提供していることとの間にズレがあるケースですね。わかりやすく表現すれば「そんなことしてもらっても嬉しくないし、ありがたくない」とか「この程度で自分たちを大事にしていくれているという意思表示になると思ってるなんて安く見られてるんですね。」という感情が社員の中に起きてしまうケースがこれに当たります。

ここで気を付けなくてはいけないのは、会社として何かの具体的な行動に出ているからといって、会社はちゃんとしているのだから文句はないでしょうという一方通行な想いにならないようにすることです。これは、社員の考えにすり寄るべしという話ではなく、一方通行な行為でもって「やるべきことはやっている」という気になるのは、注意しましょういうことです。
何より、社員に何かしてあげたいと思っての行動や打ち手が、当の社員にその想いが伝わらないとか誤解を生むということは残念であり、勿体ないですよね。私生活に置き換えて考えても、一生懸命選んだプレゼントだからといって、必ずしも相手が喜ぶとは限りませんし、そこで喜ばない相手を非難しても何一つ良いことなんてありませんよね?それは、やはり皆さんが大事に思っている社員に対する接し方、関わり方においても同じようなことが言えるのです。
では、こういった残念な事態にならないようにはどうすれば良いのか?。それは、ベーシックなことですが、やはり日頃からのコミュニケーションでどれだけ会社が社員を理解できているかということがポイントになります。別に社長がすべての社員と話すまでしなくとも、現場の管理職層が日頃からそういったコミュニケーションを社員との間で実践して、然るべき情報が社内の関係者で共有されていれば済む話です。

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今回、このテーマをコラムで取り上げようと思ったのは【コラム:会社から大事にされているか?-1】の冒頭でも書きましたように、ここ数年、様々なところで機会がある毎に社員の方々に「自分は会社から大事にされていると思うか?」という質問をさせていただき、別途でその会社の経営層の方と話してしていると、かなりの確率でなんと勿体ない事態になっているのだろうと思うことが多いからなのです。

冒頭にも書いた「経営者や上司は、社員(部下)をちゃんと大事だと思っているのに、社員はそれを実感できていないという不幸な行き違いが発生している」なんて、勿体ない以外の何もでもありません。そして、その大きな原因の1つは、いろいろな意味での【社内コミュニケーションの不足】であることは間違いありません。会社も社員もお互いに言わなくても分かってほしい、察してほしいと相手に甘えてしまっているとも言えます。もちろん、各種制度や仕組みの改善、整備という問題もありますが、それは時間もかかります。社内で必要なコミュニケーションを適切に実践することは、各種制度や仕組みの改善、整備に比べればすぐに動きやすく、まずはその実践だけでも良くなる要素は多分にあります。本コラムが「社員が会社から大事にされていると実感できる職場創り」を進めていただくヒントになっていれば幸いです。