コラム:上司だからこそあるべきを求める

 
営業であればとにかく営業成績が良い、エンジニアであれば技術力が極めて高い。部下にこういった専門職の高い能力を有する人材がいると上司としては本当に助かりますよね。ところが、こういった専門職スキルの高い部下が時に組織のネックになるケースがあります。最もわかりやすいのは、自分が周囲よりも能力が高く成果も出していることを理由に、組織のルールを無視した身勝手な振舞いをしたり周囲への接し方が尊大になってしまったりというものです。周囲は、自分よりも成果を出せる人が相手となると負い目もあったりするためになかなか指摘や注意をしづらいので、本来は上司がそれを注意するべきなのですが、スキルや成果が圧倒的であればあるほど上司も機嫌を損ねたくないという心理が働き、二の足を踏んでしまうという話は珍しいものではありません。

しかし、こういった一部のスター社員や上位20%に属するような人材にこれらの言動を許すことは、中長期的に継続的な成果を出せる健全な組織を創り運営していく上ではメリットよりもデメリットが圧倒的に多いのです。成果を出せば組織のルール守らなくても構わないし、周囲への配慮ができなくてもやむ無しという部下の存在を許すことが、組織の空気を悪くしていくというのは容易に想像がつきますし、それは組織としての活力の減退や、社員の流出などにつながっていきます。

また、本当に部下のことを考えるのであれば、こういった問題を持つ部下自身にそれが長い目で見た場合に自分自身のためにならないことを指導しておくことも必要です。専門職スキルが高く成果を出しているが扱いにくい人材は、その成果に陰りがみえてくるとあっという間に厄介者となり居場所を失ってしまいますが、それは組織の誰にとっても良いことではありません。もっと言えば、専門職分野において高い成果を出せる人材が順当にマネジメントポストへ移行してくれれば、組織としても理想的な人材育成フローとなります。だからこそ、行き過ぎた状態になる前に上司が腹を括り、多少の目先の成果ダウンのリスクがあったとしても、部下や組織にあるべき振舞いを求めていくことを実践しなくてはなりません。

現実的なところでは、目先の成果も追いかけたい為に少し目をつぶりたい上司のその気持ちもわからなくもありませんが、組織をマネジメントする上で上司が「あるべき」を部下に求めず誰が求めるのかということを考えるべきなのです。別に叱責する必要はありません、諭すなり話しあうなり上司のスタイルにあう手法をとればいいでしょう。尖った人材を抑えこむということではなく、組織のルールやあるべき論、周囲との良好な関係に立った上で圧倒的な成果を出すことを求めればいいのです。大事なのは、上司の責任のもと、特別扱いされている同僚がいるという感情、つまり不公平感が組織内に存在する状態を作らないということです。少し厳しい言い方をすれば、そういったことを行動で示せない上司は、部下にとって信頼できる・信頼したい上司足りえませんし、部下に信頼されない上司のまとめる組織が、人が良く育ち継続的に高い成果を出していけるか否かということは言うまでもないでしょう。