コラム:評価基準認識を合わせる

 
ちょっと調べものをしていた時に2014年のPRESIDENT Onlineに出口治明さんによるこんな記事を見つけました。

会社の人事評価で、思うように評価してもらえない。
どうすればいいか(LINK⇒President Online2014.9.9)

人事考課時期によくある意見の行き違い・現場の不満ですよね。出口さんの仰ることも一理あると思いますし、そもそも人間が行うことなので完璧はなかなか難しいのが現実です。とはいえ、上司の役割としてはなるべく上司と部下双方の納得度の高い評価を出せるよう務める義務もあるので、今回はこの記事を受けつつマネジメントの大事な役割である評価について少し書いてみます。

記事にあるような「自分は正当な評価をしてもらえていない」という部下の言い分ですが、そもそも本当に部下を評価する気がない、評価したくないという問題ありな上司は別問題としておいておきまして、部下を正しく評価したい、するつもりだという上司の元でも、正当に評価してもらえていないと不満を漏らす部下が存在します。何故、そうなってしまうのかの理由は大きく3つが想定されます。

1-目標設定時の相互認識が不十分

例えば、「今期は、●●●に取組みます」「▲▲▲に挑戦します」という握りを期初にしたとしますが、この「取り組む」「挑戦する」というその中身の具体的な部分やレベル感まで、しっかりと握れているかというと案外曖昧なケースが多いのです。にもかかわらずそのまま進めてしまい、考課対象期間が終わって蓋を開けてみると、「約束したことをやりました」という部下と「これでは当初約束した<やった>というレベルにない」という上司の意見がぶつかってしまうという訳です。これでは、折角頑張った部下がやる気を削いでしまっても致し方ない部分もありますし、上司としては正しく能力と結果を評価しようと思うと譲歩できないラインもあるので心苦しいですよね。
しかし、人材育成のコンサル時にお客様社内の目標設定資料を拝見してみても、結果をどのようにもとれてしまうような抽象的な表現が目立つ内容なことも少なくありません。評価するつもりのある上司と、頑張ってきた部下の間でこういったもったいない行き違いを起こさないためにも、目標設定の段階で、実行することの粒度やレベル感はしっかりと分解して具体的な内容で約束するよう意識することです。話し合いの最後で、「ここまでできて初めて評価レベルだからね」という口頭確認までできれば、上司と部下の勿体のない行き違いを無くせるはずです。ベストは、何らかの数字に置き換えておけると良いですね。

2-部下が評価基準に不公平感を感じている

これは【部下が感じている】という部分がポイントです。「私はAさんと同じことをやったのに私のほうが評価が低い」というケースなどがそれにあたるのですが、部下の視点では同じに見えても上司からすれば同じではないケースが結構ありますよね。営業だと同じ100万円の成果だとしてもその中身やプロセスが違うために評価内容も違うというケースなどがこれに当てはまる話です。ここは、結局前述の「1」と同じでどこまで事前に認識を合わせておくかがポイントになるでしょう。結果だけではなく、プロセスも踏まえての最終評価になるというように、事前に握れているかどうかということです。
その他で上司に悪気なく部下が不公平感を感じてしまうケースは、例えば業績が思った以上に好調、不調で全体的な基準を調整せざるを得なくなってしまうケースや、評価対象者が多いために悪気は無く基準がぶれてしまう(これはもちろんあるべきではないのですが、現実はありえてしまいますよね。考課面談で最初の方の人と、最後の方の人で少しぶれてしまうとか。。。)などが想定されますが、こういう時は、上司が事前に問題になりそうなポイントを想定し、しっかりと評価基準を固めて評価面談に挑むことが基本です。忙しいからとなんとなくの成り行きで進めようとすると大体の場合、後々問題になってしまいます。

3-部下が頑張れば必ず評価されると誤解している

どういう場合かと言いますと、目標として約束したことに対する取り組みは不十分なのにもかかわらず、部下が別で頑張ったことや結果的に手間をが掛けたことを後付で評価対象として申告してきて、これだけやったのに評価してもらえないと不満をこぼすようなケースです。これは、部下側に認識を改めてもらう必要があります。上司目線で考えてもらえば分かる話なのですが、約束したことが出来ていないのに別のことをやったので評価してほしいという部下を上司として評価できるかというと恐らく答えはノーの筈です。上司としても頑張ったことはもちろん評価してあげたいのは山々ですが、評価項目には優先度、重要度というものがあり、最初に約束した内容ができていなければ、やはりそれに目をつぶった評価をしてしまうと、それこそ約束した内容にしっかり取り組んだ他の部下に対して不公平になってしまいます。もちろん、すべきことをした上で更に上乗せに頑張ってきたことがあるのであればそれはプラス評価する必要はありますが、何にせよまずは当初に約束されたすべきことをやりきってからの話だということです。

いかがでしょう。冒頭で紹介した記事で出口さんが取り上げているのは結果が出た後の部分で、言うまでもなく結果が出た後に自分の成果に自信があるならしっかりと上司と部下が話し合うことは大事ですが、それ以前にまずは事前にどれだけ精度高く、評価基準の認識共有やすり合わせができているかのほうが大事なのです。