コラム:適切に報連相を機能させる-2

上司自身が思うような報連相が組織内で機能していなかったり、適切な報連相の実践が風土として定着していない場合のアプローチとして「報連相タイム」の設定を提案した前回のコラム「コラム:適切に報連相を機能させる-1」の後編です。

自組織で報連相を適切に機能させるために管理職者が行っている代表的なアプローチには

・自分から声を掛けるようにしている
・何かあれば相談に来るよう日頃から伝えている

の2つがあるけれど、それが思うような成果を上げているかというと答えは「NO」であるケースも少なくは無くて、そこには部下側の本音として

1-相談して良いタイミングがわかりにくい
2-いつも忙しそうで相談しにくい
3-何をどう相談すればいいかわからない

が存在している。そして自組織の中で適切に報連相が実践されていない原因が最初の2つ「相談して良いタイミングがわかりにくい」「いつも忙しそうで相談しにくい」である場合、対策アプローチとして「報連相タイム」の実践が効果ありますよというのが、前回のコラム「コラム:適切に報連相を機能させる-1」の内容でした。

今回の後編は、組織で適切に報連相が実践されない部下側の本音の3つめ「何をどう相談すればいいかわからない」について解説していきます。

この「何をどう相談すればいいかわからない」が、適切に報連相が実践出来ていない理由になりやすいのは若手に比較的多く見られる傾向なのですが、根本的な要因は「部下自身のスキル不足」「組織の風土」という2つがあります。

◆要因1:部下のスキル不足

これはそのままなのですが、仕事上で起きた出来事に対する「原因分析力」や「課題抽出力」が足りないために、上司に報連相すべき事案があった時に、要点とすべきポイントや核心を軸とした説明が上手くできないわけです。よくあるのは、困ったことが起きている事実はあってそれがどんな状態かまでは説明できるが「どうしてそうなったのか?」「どうしたいのか?」が自分では導き出せていない。かといって、丸投げで「〇〇で困ってます」という報告や相談をするわけにもいかないという気持ちはあり、結果として自分のところで塩漬け状態にしてしまっているというパターンでしょうか。

万が一、中堅以上のキャリアを持つ部下がこんな状態だとそれはまた別の問題なので置いておくとして、若手をこのような状況にさせないために、ルールとして「上手く説明することは求めない代わりに、報連相はとにかく速やかに行うこと」を意識させ、実践を徹底させましょう。その際、「報連相はまず結論から話す」ように指導すると上司として対応はしやすくなります。状況を上手く説明できない若手は、これまでの経緯を物語のように取り留めなく話す傾向が顕著です。「前置きはいいから、まず要点から話してくれ」と上司に思わせるスタイルですね。

ですから、まず会話の冒頭に「これは報告?相談?連絡?」とワンクッション置いた上で「では、まず要点から話してくれる?」と投げかけることによって

「〇〇な状況なので、▲▲という対応をしようと考えていますがOKでしょうか」
「〇〇という状況になって困っています」

ということを先に話すように習慣づけさせて、その内容に応じて、上司が経緯説明を求めたりするようにするだけでも、効率も違ってきますし、結果的に「要点を適切に相手に伝える」という大事なビジネススキルのOJT機会にもなり一石二鳥です。

◆要因2:組織の風土

部下が適切な報連相を実践できていない根本的な理由を分析した際に、実は結構な障壁になっているのが組織の風土です。部下が「何をどう相談すればいいかわからない」を報連相を出来ていない理由としてあげやすい組織によくある特徴、それは

「結局、何が言いたいんだ?!」
「君の言ってる意味はよくわからない」
「もっと要点を整理してから報連相しろ!」

Thumbnail23と上司が部下を叱責している光景が組織で日常化しているということです。叱責されている対象が若手層ではなく、主に先輩たちであっても影響は同じです。その日常から植えつけられる「うちの上司に下手な報連相をしたら叱責をされる」というプレッシャーが報連相を行うことへの心理的なハードルになっていて、若手ほど「叱責されないように」報連相するにはどうすればいいかがわからなくて上司の元へ向かう足取りを重くさせてしまうのです。

つまり適切な報連相が実践できていない理由としての部下の内心には「うちの上司は報連相しにくい(しずらい)」という隠れた本音中の本音が存在します。こういう風土傾向がある組織では、「クレーム」などのトラブル系報連相が特にスムーズに行われない傾向がありますね。要は叱責されそうな内容はなるべく後送りしてしまう傾向があって、上司の元へと情報があがるのは「いよいよどうにも対処できなくなってから」になりがちです。

私も管理職経験が長かったので、言いたくなる「上司の気持ち」は十二分にわかります。でも、円滑に組織をマネジメントする為には、適切な報連相が実践される風土は必須です。ですから、もし先ほど上げたような日常に心当たりがある管理職の方は、大きな目的のためには、言いたくなる気持ちを抑えることから変えてみましょう。叱責するのではなく、まず冷静に伝えることから意識してみてください。
Thumbnail41「もっと要点を整理してから報連相しろ!」と少しヒートアップして言葉を発するのではなく、「ちょっと要点が見えてこないから、もう少し整理して話してみてくれるかな」と、イメージとしては指示するというより、依頼するような伝え方にしてみる。報連相が行われている場に「怒り」に寄った空気が漂わないように気を付けるだけでも、案外、部下への伝わり方、受け止め方は違うものです。もちろん、時には厳しく叱らなくてはいけない場合もあるでしょうから、その時は適切にそのアプローチをすれば良いのですが、部下に常態的な心理的プレッシャーを与えている上司は常に部下に対する言葉が「強め」だったり「高圧的」だったりします。時に自分を客観的に観るのが難しいこともあるでしょうから、信頼できる第三者に「自分は部下に対して基本スタンスとしてどう接しているように見えているか」意見を求めてみてください。もしくは、ストレートに「うちの部署は、私に報連相しにくい雰囲気があるように見えているか?」とその第三者に聞くくらいでもいいかもしれませんね。ここで意識すべき大事なポイントは、弊社のコラムでいろいろなケースでもお伝えしている「上司自身にそのつもりがあるかないかではなく、部下や周囲にはどう伝わっているか、見えているか」という視点です。

実際に、組織内での報連相が適切に実践されていない組織で、原因分析の結果そういう風土が問題だとわかったケースで、上司の意識とアプローチを変えてもらっただけで見違えるように報連相がスムーズに行われるようになったという改善例はいくつもあります。そんな時に、部下の人たちに「どうして最近報連相が適切に機能するようになったと思う?」と聞くと、決まって返ってくる答えは「上司が、以前よりも相談しやすい雰囲気になった」というものです。上司がそこを変えるだけで、自分の組織の中での報連相がより適切に機能するようになるのであれば、「一言言いたい気持ちを抑えて、部下へのアプローチを変える」を行動に移さない手は無いですよね。

ちなみに、ごく稀に「うちの上司に相談しても大したアドバイスもらえないから意味ないですよ」という残念過ぎることを、部下側の報連相しない理由の本音として聞くこともあるのですが、そこは今回のコラムの対象外の問題についての話しということで。。。

ということで、前編:「コラム:適切に報連相を機能させる-1」とあわせて、組織内で適切に報連相が実践されていない場合の、ちょっとしたことで改善出来るアプローチについて書いてきました。信じる信じないはお任せしますが、先日もこれと同じ話をさせて頂いたところ、すぐに実践に移された結果「あきらかに部下たちの報連相の頻度が上がって驚いている」という嬉しい報告を頂いたばかりです。ポイントは「そんなことで変わるなら苦労しないと聞き流さず、すぐに行動実践していただけた」に尽きると思います。